「ラップの怪」 ~ 認知症が進み、食品用のラップが使えなくなった母
認知症が進むと思わぬ事が起きてきます。まさかそんなことが!?と新たな発見に驚く日々。まさに「認知症ワールド」という不思議な国を旅しているようなそんな感じです。そんじょそこらのアミューズメントパークよりはよほどエキサイティングかもしれません。だって、本当に「まさか!」と信じられないようなことが目の間で起きるのですから。しかも入園料は無料、年間パスポートなんてのも不要なのです!(^^;)
さて、これは昨年に帰省した時のことなのですが、台所で奇妙なものを見つけます。
やや黄色に変色したプラスチックの筒。それが何本も。
一瞬、何だろうと首をかしげますが、すぐにわかりました。
食品用のラップ。そう、サランラップとかクレラップとかいうアレです。
それがたくさん箱から出して裸の状態でまとめてあるんです。
横には元々入っていた箱が、こちらも沢山。
なぜ?
これは事件です!(笑)ま、それは言い過ぎだとしても、少なくとも普段ではあり得ない不思議な現象です。
よぉく見ると、みな切れ目がわからなくなっています。そう、ピタッと貼り付いて、どこから剥がせば良いかわからない状態。これは使えないだろうと、すぐに一生懸命切れ目を探し、そして、そばにあった空き箱に戻しておきます。でも、これ、面倒だなぁ。全部やるのは大変だ。新しく買ってこよう!
そこでスーパーで新しいラップを2~3本買って来たのですが……。
その数時間後、謎が解けます。
台所に来た母、ラップを使おうとするのですが、箱からラップを一部引っ張り出して、切るところまでは良いのですが、その後、丁寧に箱の中に切れ目を戻してしまうのです。「ああ!お母さん、やめて~~~!」と叫ぶ間もなく。
そうなると、もう大変。
次にもう一度使おうとラップを手に取るのですが、すでに時遅し。ラップはすっかりと切れ目が貼り付いて、どこが切れ目かわからなくなってしまいます。やがて箱からラップ全体を出して、一生懸命探すのですが、手立てはなく……、母は結局使うのをあきらめてしまいました。
「使いにくいねぇ……」と不満たらたらの母。「いや、それ、お母さんに原因が……」と言いそうになる言葉を飲み込みます。そっか、認知症のせいか!
なるほど!こうして哀れなラップちゃんたちは一度使われるとそのまま使えなくなってしまって、せっかく新しいのをヘルパーさんが買って来てくださっても、次から次へと、皆犠牲者となり、箱から出されて積んで置かれるというわけですねぇ。可哀想なラップちゃんたち。(-_-;)
うーん、でもこれは困ったぞ!
最初は何とかしようと、我々も頑張ったんです。そう、一生懸命母が使った後に剥がす作業を。でもこれ、本当に大変です。
老眼の進んでいる我々、それでも何度か努力して、切れ目を見つけ、それが使えるようにゆっくりと剥がしてたのですが、これは実に骨の折れる作業。何度も途中で破れたりして失敗します。完全復旧までには1本につき10分以上はかかります。もちろん認知症が進んでいる母にはほぼ不可能な高度な作業です。
そして、我々がせっかく頑張っても、その後、母が一回使うと元の木阿弥。
賽の河原で石を積み上げても、鬼がやってきて石を崩してしまう。そんな寓話まで思い出してしまいます。
これは、もう母には食品用ラップを使うというのは不可能になったという現実を直視するしかないですねぇ。
結局その後ヘルパーさんが毎日来ることになり、母があえてラップを使わなくても良い生活になったので、ホッとしました。
でも、認知症でラップが使えなくなるというのは、新鮮な驚きでした。
認知症という不思議な世界の旅を我々も一緒に伴走をしながら、日々発見が続きます。
それにしても、認知症の人でも使えるラップをメーカーさんは開発してくださらないですかねぇ。切り口が元に戻らない工夫さえ箱に施してくだされば良いのですが……。
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